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続・風花の庭

朝がほの凋まぬほどに降り晴れて雨より後の秋のあつさは(上田秋成)

ロケットマン

  posted by さや at 11:00:00 │EDIT




監督が『ボヘミアン・ラプソディ』の関係者とあって似た作りになっていたせいで、若干二番煎じ感を抱いてしまいました。また、フレディ・マーキュリーと違い、エルトン・ジョンや『Your Song』の名前は知っていても彼がどんなミュージシャンでどんな曲を歌っていたのかはまるで知らなかったので、『ボヘミアン』よりピンと来なかった部分があったことは否めません。
ただ、天才は孤独ーーエルトン・ジョンもまた、その方程式から逃れられない人間のひとりだった、ということはしっかりと伝わりました。
しかしフレディとジョンは違う人間です。孤独の苦しみは同じであっても、その背景や立ち直り方はもちろん違います。
アルコールと薬物とセックスの依存症から脱却するための集会で語られ始まる彼の半生の物語。
幼少期から孤独と闘ってきたレジー少年。ピアノと出逢い、才能に目覚め、友と理解者を得て、やがて世界中から称讃と大喝采を受けるようになる。
超満員のライブハウス、奇抜な衣装、酔わせる歌詞とスタイリッシュな音楽。ミュージカルはカラフルでめくるめく。しかし心に届くのは、お金でも名声でも満たされない彼の淋しさと悲しさ。
心の隙間を埋めようと、彼はあらゆるものを手に入れて、あらゆるものを失いました。
ほんとうに欲しかったものは、ひとつだけ。代わりのきかない、永遠に手に入らない、たったひとつだけ。
すべてを語り終えて、彼はようやくそのしがらみから解き放たれる方法を見つけます。彼に、心の充足が、音楽が戻ってきた瞬間でした。
過去と向き合い、音楽への愛を見つめ直す。静かな結末でした。
作品として比較するならば、みずからの音楽を、それへの愛を魂をこめて叫んだライブ・エイドのカタルシスには勝てませんでした。しかしひとりの人間が絶望と破滅からふたたび立ちあがる方法は、人それぞれ。静かに語るエルトン・ジョンとその奇抜な衣装のミスマッチは、天才と孤独の乖離を示しているようでより切なくもありました。
作品の質を高めたのが吹き替えなしで歌い上げたタロン・エガートンの熱演であることは言うまでもありませんが、相棒の作詞家を演じたのが『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルというのも感慨深いものがありました。違うお話であることはわかっているのですが、大人の寛容と包容力を得て成長したビリー少年を観ているような気にもなったのです。








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岬の兄妹

  posted by さや at 13:00:00 │EDIT


ポン・ジュノや山下敦弘のもとで修行を積んだ片山慎三の初監督作品。キム・ギドクの『悪い男』がベースにあったそうですが、男が女を売春させる以外に共通する部分はありません。
むしろ、人物の心情を遠景で表現する撮り方はさすがポン・ジュノの助監督を勤めただけあって、似通ったものを感じました。また片田舎の小さなコミュニティの中で入り乱れる長閑とは程遠い人間模様は、山下敦弘の『松ヶ根乱射事件』を思い起こしました。
身体障害を理由にリストラされた兄・良夫。知的障害者である妹を抱えての生活は次第に逼迫していき、電気も止められ食べるものにも事欠く日々。そして良夫はある決断をします。
貧すれば鈍す。
お金を出して映画を観る人間のたいていは、その言葉とは離れたところにいるだろうと思います。
兄妹のありさまは、我々のまだ鈍していない感覚を、これでもかと切り刻んできます。
生活のために、売られた妹。それがどういうことを意味するか理解しえない彼女は、素直に感覚の中に身を投げ出します。して、食べて、寝る。彼女は人間の三大欲求に忠実に生きています。どちらかといえば兄寄りの視点を持つ者からは、そのように見えます。
しかし、本当に悲惨なのは、自分はその意味を理解していると思っていた兄のほうなのかもしれません。妹は「理解しえない」と思い込み、自分がどれだけ外道なことをしているのかは「理解している」と思い込み、世界から拒絶された自分たちが生きていくにはこの道しか残されていないと思い込み。
兄もまた、「理解しえない」人間だったのだろうと思います。
友人に借りるのはお金ではなく情報であったはずです。妹が三大欲求に忠実ならば、人としてのあたりまえの尊厳もまた、持っているはずです。自分の罪を許すのは決してその罪を理解していると思い込んでいる自分自身ではないのです。
自分こそ理解しえない人間だったと思い知らされた兄の罰は、これからもきっと続いていくのだろうと思います。兄の前で泣き叫んだはずの妹が最後に見せた笑顔が、永遠に続く地獄の業火なのかもしれません。
して、食べて、寝る。
生まれ落ちれば、そんな欲求を満たすために生き、そして死ぬ。
他人に尊厳を傷つけられて、どれだけもがき苦しもうと、人は容易には死ねません。生きたい。それもまた、人間のあたりまえの欲求だから。人が人として胎内に根づいた瞬間に、三大欲求よりも前に生まれる欲求だから。
だからもしかしたら、この物語の中でいちばんしあわせだったのは、妹のお腹の中にいた誰が父親ともわからない命の種だったのかもしれません。振り下ろせなかったコンクリ片ではなく、冷たい器具によっていとも簡単に生への欲求を潰されたそれは、少なくとも誰かを苦しませることも傷つけられることもせずに済んだのだから。








ドラマ寸評(2020年第1期②)

  posted by さや at 21:13:46 │EDIT
『麒麟がくる』
王道への回帰路線で視聴率も上々のスタート。制作側もほっとしていることでしょう。
驚いたのはオープニングクレジットの昭和風味な明朝体の大きさだけでなく、衣装の色合いの鮮やかさ。確かに目立ってナンボの戦国時代とはいえ、当時の染料で庶民に至るまであれほど派手な着物を纏うことができていたのか、自分の乏しい知識では何とも判断しかねますが、王道と言いながらこちらの先入観を裏切ってくるところは、これからの展開を含め非常に興味をそそられます。
時に悪役、時に悲劇の主人公と、物語によってさまざまに印象を変える明智光秀。
その人生はさまざまな英雄に振り回されて、本人が時代の先頭に立ったのはわずか三日間。
だからこそ、光秀自身だけでなく、そのまわりの英雄たちがどれほど魅力的に描かれるかも重要になってきます(そのあたりは『真田丸』も同じで、こちらは大成功でした)。
今のところ、齋藤道三(モックン)も、織田信秀(高橋克典)も貫禄たっぷり。チョイ見せされた松永久秀(吉田鋼太郎)も実にうさんくさくて魅力的です。これから登場する信長(染谷将太)や藤吉郎(佐々木蔵之介)らが、光秀にどう影響を与えていくかも実に楽しみ。
『太平記』でも市井の人びとを歴史の渦へ巧みに絡ませていた池端俊作ですが、今回も町医者の望月東庵やその助手である駒、農民の菊丸などが初回から登場しました。とくに菊丸は…最後の最後まで光秀の傍らに付き添いそうな気がするのは…。
そして、開始前からアレコレ話題になってしまった帰蝶ですが、織田家へ嫁ぐ前に結婚歴があったとは知りませんでした。信長の強い個性に負けそうにない勝気な姫の雰囲気ですが、その凛とした立ち居振る舞いの裏にはやはり戦に翻弄された悲しき女性としての一面があったことを一瞬で感じさせた川口春奈には、ステレオタイプにとどまらない新しい帰蝶像を確立させてくれることを期待します。
これから何が起きるのか、おおまかな流れをわかったうえで物語を楽しむ、この一種の安心感が大河なのだなあ…としみじみします。

『テセウスの船』
主人公がタイムスリップして家族の犯罪を未然に防ごうとする――ドラマで描くと荒唐無稽になってしまいそうな題材ですが、竹内涼真&鈴木亮平のふたりの演技が情感あふれており、不覚にも泣かされてしまいました。
平成元年でもまだまだ昭和の色を濃く残した東北の片田舎。一面の雪景色に鎖された村で起きる不穏な事件の数々。父は本当に毒殺事件を起こしたのか。真犯人は誰なのか。
初回から疾走感と緊迫感に満ちていました。質の高いミステリーです。
榮倉奈々の老けメイクはさすがにやりすぎ感がありましたが、30年前に戻った時の肝っ玉母ちゃんぶりとのギャップが大きかっただけに、はじめて母の笑顔を見た主人公の幸福感がいっそう心に響きました。それもあって、自然と主人公を応援する気持ちになってしまうのです。
アクセントになっているユースケ・サンタマリアや麻生祐未など、脇を固める村人たちも怪しい雰囲気がぷんぷんしていて、どんなラストが待っているのか想像もつきません。
ただ、せいやが真犯人…はナイ、はず。

『スカーレット』
あれほど胸キュンで満たされていた八郎沼が、一気に干上がってしまう展開に…。
いや、クズハチにならなくて良かったとは思うのです。
三津の引き際は見事なものでした。夫婦の絆に陰を落とすことになった三津ですが、不思議とそのキャラに不快感はなかったのです。
三津が八郎に惹かれるのは自然なことだと思うし、しかしそれと同じくらい喜美子にも尊敬の念を抱いていることは伝わってきました。百合子との間に芽生えた友情も彼女にとっては大切なものであったはずですし、川原家を壊してはいけないという自制の念が八郎への思慕を上回った結果でしょう。ちょうど同時期に報道されていた棒…じゃない、某朝ドラ俳優のクズとは大違いです。
一歩間違えばウザったくてイヤミなキャラになりそうな三津でしたが、『スカーレット』と『アシガール』は同じスタッフらしいですから、黒島結菜の魅力の引き出し方を熟知していたのでしょう。
穴窯の魅力に取り憑かれてしまった芸術家気質の喜美子と、どこか自分に対して冷めていて既存の枠からはみ出し切れない八郎の間の亀裂は、決定的なようです。
ふたりの人生観の違いは、恋人になる前から明確に描かれていました。しかし結婚とは、異なる環境で育ち異なる価値観を持ったふたりが、ひとつ屋根の下それらを擦り合わせて、また新しい環境と価値観を育てていくという作業のくり返しでもあります。そして、そこにお金という現実的な問題が横たわってしまうと、その工程は途絶えてしまいがちです。
ですが、冷静に思い返してみれば、穴窯に対して消極的だった喜美子の背中を押したのは八郎だよな…? 莫大な資金が必要なことをわかっていながら、たった一度で成功できるとでも思っていたのだろうか…?
八郎の説得は至極もっともだけれど、いざシビアな現実をつきつけられて、怯んでしまったように映るのです。しかも喜美子が穴窯に執着するようになったのは、炎の前でキャッキャしたり寄り添って眠ったりする八郎と三津の姿を見てしまった反動も原因のひとつであります。稲垣吾郎の出演が発表された時、「喜美子を支える存在」という意味深な紹介がされていたので、「まさかやっぱりクズハチに!?」と血の気が引いてしまったのですが、これはこれで、違う意味での八郎株の大暴落でした。
しかし八郎には八郎の信念があり、喜美子とは異なる陶芸家としての生き方があります。それもまた、喜美子のために犠牲にしてはならない尊いものです。
ふたりのこれまでの道を丁寧に描いてきたからこそ、これからのふたりを祝福できるような、前向きなお別れになってほしいものです。

『コタキ兄弟と四苦八苦』
野木亜紀子&山下敦弘とあっては興味を惹かれずにはいられない…。
古舘寛治と滝藤賢一というおやじくさいキャスティングがくり広げるのは、そのまんま、レンタルおやじの物語。30分枠という短時間で、さまざまな事情を抱える依頼人に振り回される兄弟の四苦八苦が描かれます。
野木亜紀子の歯切れ良い脚本と山下敦弘の人間味ある映像に加えて、芸達者な演者たち。実に贅沢な時間です。マドンナ的存在? の芳根京子もアクセントになっています。
東京より二週遅れての放送のため、ネットニュースでのネタバレをかわさなければいけないのがつらいところ。




ライブでした。

  posted by さや at 09:11:58 │EDIT
《SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 ”MIKKE"》

チケットの抽選日。結果メールが届いたのは、福山の神社の境内でした。

当タッタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

神様! ありがとう!




イザ! 2年半ぶりの大阪城ホール!!
ちなみに座席は当日発券で、会場に行かなければわからないシステムでした。
残念ながらかなり後方…。
メンバーが登場してもまったくわからん…。

それでも、『見っけ』のイントロが流れれば会場一体、熱気に包まれました。

以下、セットリスト。
見っけ
はぐれ狼
エスカルゴ
けもの道
小さな生き物
遥か
快速
放浪カモメはどこまでも
ミーコとギター
ラジオデイズ
優しいあの子
ヒビスクス
僕のギター
まがった僕のしっぽ
青い車
YM71D
ロビンソン
ありがとさん


8823
僕のすべて
ヒバリのこころ
醒めない
チェリー
ヤマブキ
…こうして書き上げただけでも、感動がよみがえってきます。
『ミーコとギター』は、今のマサムネさんの声で聴くとまた違った味わい。
スピッツに転んだきっかけのアルバム《三日月ロック》からの選曲が多かったのには大興奮でした。
『ヒビスクス』『楓』のような、個人的スピッツランキング上位の曲が聴けたのも幸せ♪

合間のトークでは、あいかわらずのマサムネ節(周囲からのツッコミあわせて)全開。
前回のライブに行った時、その前日には同じ大阪で行われていたミスチル公演を受けてマサムネさんがミスチルの歌を一節歌ったと聴いて、羨ましがったものですが、
この日! ついに!
マサムネさんの『innocent world』が聴けましたあーーー!!!
しかも、『Lemon』まで! 幕間にぜいたくすぎる!!

他にも、大阪に住みたいと言ってくれたり、田村さん演奏中にこけたり、クージーさんイントロ間違えたり、いろいろ盛りだくさんでした。

おみやげは、ありがとさんマグ。

   


しばらくは、この余韻でがんばれそうです。





ヤスオーのシネマ坊主(2020年1月)

  posted by さや at 01:28:59 │EDIT
・母なる証明:★★★★☆

観終わった後は不快感しか残らないですし、真犯人も途中で察しがつきます。ただ、最初と最後の踊りの演出は過剰だとしても、この監督は「母」の愚かで狂った息子への愛情を描きたかったのでしょうから、そこはもう怖いぐらいよく描けていましたね。中盤以降、ぼやかさずに真実をはっきりとこちらに突きつけてくるところも何とも言えない迫力がある作品です。

・ロケットマン:★★★★☆

父親が抱きしめてくれさえすればいいんですけどね。世の中には金ではどうしようもないことがありますね。いや僕は例え精神が病んでもエルトン・ジョンのような才能を持って産まれたかったですけどね。ボヘミアンラプソディの2番煎じとしか言いようがないのでそれ以上の評価は付けられないんですが、こちらの方が盛り上がりがないぶん、人物描写は深いような気がします。

・シングストリート:★★★☆☆

巷の評判がいいので隠れた傑作なのかと期待してましたが、設定もベタだし、登場人物はステレオタイプだし、ストーリーにも見るべきものはないので、そんなにいい映画とは思いませんでしたね。主人公は最後バンドのメンバーや主人公の良き理解者である兄貴を捨て、女と海外に行くのですが、そういう結局音楽より女かよというエンディングは僕は好きじゃないですね。

・お嬢さん:★★★☆☆
 
これはエロの映画なんですね。僕はサスペンス的なものを期待していたのですが、一応三部構成で展開も二転三転するんですが、僕はおーっと思ったのは第一部のラストだけでしたね。あとは本筋のストーリーとあまり関係のないエロシーンを長々と描いた長尺の映画です。最後もエロシーンで、はよ終われと思いましたから。いや独特の薄気味悪い世界観は悪くはないんですが。

・パージ エクスペリメント:★★★☆☆

このシリーズも長いですねえ。ここまでくると時間軸も最初に戻すしかないですよね。政府介入など安直な新要素はあるとはいえ、もう新鮮味はないです。もうこのシリーズ自体をパージすればいいのではないでしょうか。初期の作品にはあったサスペンス的要素も完全になくなり、もはやアクション映画ですね。ただ、単品のアクション映画として観たら、面白くなくはないです。

・スプリット:★☆☆☆☆
 
ありふれた多重人格の主人公の緊張感のない密室スリラーをダラダラと観せられた挙句、ラストでブルース・ウィリスが登場して、はるか昔に観た「アンブレイカブル」と繋がってることがわかります。「アンブレイカブル」は観ていますが、ちゃんと完結していましたから今さらなんだと思っただけで、何の衝撃もなかったです。更なる続編のための新キャラの紹介映画でした。

・アップグレード:★★★★☆
 
少し古臭いし、マニアックだし、あまりお金もかかってなさそうな作品ですが、シンプルに面白かったですね。もう一捻りあれば満点だったのですが。ラストも同じAI物の「エクスマキナ」と同じパターンとはいえ、僕はそれまでステムに好印象を抱いてしまっていたので、かなりショッキングでした。すべての真実が明らかになり思い返せば、ゾクゾクするぐらいの悪党ですから。
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プロ野球&連ドラ視聴の日々さまざま。
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