かすむ夜の光を花とにほふにぞ月のかつらの春もしらるる(二条為明)
フィギュアに夢中になっている間も、他の競技で盛り上がりました。
今大会メダルを量産しているスノーボード競技ですが、スロープスタイルでも男子で長谷川選手が銀、女子は深田選手が金、村瀬選手が銅と素晴らしい結果を残しました。ルールがまったくわからないまま観ていましたが、女子ではメダリスト3人とも最後の試技で最高点を出すというスリリングな展開でした。エアだけではなく最初のレールが重要というのもはじめて知りました。奥深いですね。
ノルディック複合では最後のオリンピックと公言していたベテランの渡部選手が出場。メダルには届きませんでしたが、最後の雄姿を目に焼きつけました。競技後の詩的なコメントも心に刻まれした。存続が危ぶまれているノルディック複合ですが、なんとか残される道筋を見つけてほしいと願います。
1000m・500mですでに銅メダルを獲得している高木選手、3つ目のメダルを目指しチームパシュート。スムーズな先頭交代が印象的でしたが、今のトレンドは隊列を変えず、後ろの選手が先頭を押しながら進むそうです。つまり先頭の高木選手の負担は半端ないわけですが、今大会も過密スケジュールの高木選手を後ろの2人がサポートします。
準決勝の相手は強敵オランダ。予選で首位に立てず厳しい戦いを強いられることになりました。中盤まで先行されるも、終盤に逆転。最後の一周は解説の高木菜那さんの声にも力が入ります。こちらも手に汗握りましたが、ゴールはわずか0.11秒差でオランダが先着。2大会連続の決勝進出はなりませんでした。
夜中に行われた3位決定戦。大丈夫だろう…と信じて眠り、翌朝開いたスマホには銅メダル獲得の報。結果を知ってから観ても、スタート直後の野明選手の出遅れや、途中でつまづきかけた場面にはドキリとしました。初出場がメダルマッチ、緊張感は相当なものだったでしょう。
笑顔の銅メダル。しかし、高木選手が見据えていたのは本命の1500mでの金メダルでした。
集大成と位置づけた最後のレース、菜那さんも実況席から声を送り続けました。途中まではメダル争いのタイムを刻むも終盤に失速。結果は6位でした。バンクーバーから16年。どれだけ苦難の道程を重ねても、順位はついてしまう。「挑戦は終わった」という言葉にこめられた思いを想像することすらおこがましく感じます。高木選手が残したのは、オリンピックメダル10個という結果以上に、挑戦する姿の潔さ、鍛えられた心身の美しさ。あと16年経ったとしても決して色あせることはありません。
正直、日本のメダルはこれで終わりかなと思っていました。残り2日となった18日、6冠目のクレボステップ(クロスカントリー50キロ)を見届けて、ふとスマホに目を落とすと、スキークロスで古野選手が決勝進出の報が。あわててチャンネルを合わせます。
この競技の中身をまったく知りませんでした。4人で争う決勝、ひとりだけメダル圏外になるとはなんて残酷なんでしょう。海外選手に囲まれた古野選手はとりわけ小さく見えます。スタートダッシュも、やはり体格の大きい方が有利なのか遅れて見えました。最後尾で前を追います。何度も前に出ようとするもなかなか出られず、それでもだんだん距離が縮まってきます。解説と一緒に「いけーっ!」と熱くなりました。最後まで死力を尽くすも、わずか及ばず。古野選手の名前の横には「4」が示されました。
外国人に体格も体力も劣る古野選手が短時間で何レースもこなして疲労困憊の中、メダルまでわずか0.08秒まで迫った、その瞬間に立ち会えた。感動で、胸がいっぱいになりました。まだこんな瞬間がオリンピックに残っていたなんて。
その日の夜中にはフィギュアのエキシビションが行われました。千葉選手が選ばれなかったのはガッカリですが、美の饗宴を楽しみました。
オープニングはカロリーナ・コストナー。またコストナーの演技が観られるなんて! 現役時代と変わらない美しいスケーティングに酔いしれました。ペトロキナ+男子選手は、全員演技派。アンバーの力感と色気にもうっとり。
坂本選手のエキシビションはこの日のために作り上げたオリジナルプログラムでした。今までの振り付けが少しずつ入ったまさに集大成の作品。解説しながら鈴木明子さんがだんだん涙声になっていき、最後の「ありがとう、かおちゃん」にはこちらの涙腺も崩壊しました。
最後は金メダリストたちの登場。が、シャイドロフ選手は金メダリストとは思えないカンフーパンダの着ぐるみでした。おなじみとはいえ、ここでもそれやる? 最後のジャッキー・チェン登場には目がテン。
りくりゅうは、本番ではできないジャイアントスイングで会場を沸かせました。しかしりくちゃんの衣装のチャック全開は、ネットニュースで知っていたとはいえ笑っちゃいました。
トリを飾るのはアリサ・リュウ。ふわふわスカートの青い衣装がキュートでした。
全員集合のフィナーレは壮観。マリニン&アダム・シャオ・イム・ファのWバックフリップ! かおちゃんのセルフィーの腕前も素晴らしい! ここでもペトロシアンに気を配るアンバー姐さん、さすがです。
終わるのが名残惜しい、最高のエキシビションでした。
かくして、オリンピック終了。
ロスです…。
今大会メダルを量産しているスノーボード競技ですが、スロープスタイルでも男子で長谷川選手が銀、女子は深田選手が金、村瀬選手が銅と素晴らしい結果を残しました。ルールがまったくわからないまま観ていましたが、女子ではメダリスト3人とも最後の試技で最高点を出すというスリリングな展開でした。エアだけではなく最初のレールが重要というのもはじめて知りました。奥深いですね。
ノルディック複合では最後のオリンピックと公言していたベテランの渡部選手が出場。メダルには届きませんでしたが、最後の雄姿を目に焼きつけました。競技後の詩的なコメントも心に刻まれした。存続が危ぶまれているノルディック複合ですが、なんとか残される道筋を見つけてほしいと願います。
1000m・500mですでに銅メダルを獲得している高木選手、3つ目のメダルを目指しチームパシュート。スムーズな先頭交代が印象的でしたが、今のトレンドは隊列を変えず、後ろの選手が先頭を押しながら進むそうです。つまり先頭の高木選手の負担は半端ないわけですが、今大会も過密スケジュールの高木選手を後ろの2人がサポートします。
準決勝の相手は強敵オランダ。予選で首位に立てず厳しい戦いを強いられることになりました。中盤まで先行されるも、終盤に逆転。最後の一周は解説の高木菜那さんの声にも力が入ります。こちらも手に汗握りましたが、ゴールはわずか0.11秒差でオランダが先着。2大会連続の決勝進出はなりませんでした。
夜中に行われた3位決定戦。大丈夫だろう…と信じて眠り、翌朝開いたスマホには銅メダル獲得の報。結果を知ってから観ても、スタート直後の野明選手の出遅れや、途中でつまづきかけた場面にはドキリとしました。初出場がメダルマッチ、緊張感は相当なものだったでしょう。
笑顔の銅メダル。しかし、高木選手が見据えていたのは本命の1500mでの金メダルでした。
集大成と位置づけた最後のレース、菜那さんも実況席から声を送り続けました。途中まではメダル争いのタイムを刻むも終盤に失速。結果は6位でした。バンクーバーから16年。どれだけ苦難の道程を重ねても、順位はついてしまう。「挑戦は終わった」という言葉にこめられた思いを想像することすらおこがましく感じます。高木選手が残したのは、オリンピックメダル10個という結果以上に、挑戦する姿の潔さ、鍛えられた心身の美しさ。あと16年経ったとしても決して色あせることはありません。
正直、日本のメダルはこれで終わりかなと思っていました。残り2日となった18日、6冠目のクレボステップ(クロスカントリー50キロ)を見届けて、ふとスマホに目を落とすと、スキークロスで古野選手が決勝進出の報が。あわててチャンネルを合わせます。
この競技の中身をまったく知りませんでした。4人で争う決勝、ひとりだけメダル圏外になるとはなんて残酷なんでしょう。海外選手に囲まれた古野選手はとりわけ小さく見えます。スタートダッシュも、やはり体格の大きい方が有利なのか遅れて見えました。最後尾で前を追います。何度も前に出ようとするもなかなか出られず、それでもだんだん距離が縮まってきます。解説と一緒に「いけーっ!」と熱くなりました。最後まで死力を尽くすも、わずか及ばず。古野選手の名前の横には「4」が示されました。
外国人に体格も体力も劣る古野選手が短時間で何レースもこなして疲労困憊の中、メダルまでわずか0.08秒まで迫った、その瞬間に立ち会えた。感動で、胸がいっぱいになりました。まだこんな瞬間がオリンピックに残っていたなんて。
その日の夜中にはフィギュアのエキシビションが行われました。千葉選手が選ばれなかったのはガッカリですが、美の饗宴を楽しみました。
オープニングはカロリーナ・コストナー。またコストナーの演技が観られるなんて! 現役時代と変わらない美しいスケーティングに酔いしれました。ペトロキナ+男子選手は、全員演技派。アンバーの力感と色気にもうっとり。
坂本選手のエキシビションはこの日のために作り上げたオリジナルプログラムでした。今までの振り付けが少しずつ入ったまさに集大成の作品。解説しながら鈴木明子さんがだんだん涙声になっていき、最後の「ありがとう、かおちゃん」にはこちらの涙腺も崩壊しました。
最後は金メダリストたちの登場。が、シャイドロフ選手は金メダリストとは思えないカンフーパンダの着ぐるみでした。おなじみとはいえ、ここでもそれやる? 最後のジャッキー・チェン登場には目がテン。
りくりゅうは、本番ではできないジャイアントスイングで会場を沸かせました。しかしりくちゃんの衣装のチャック全開は、ネットニュースで知っていたとはいえ笑っちゃいました。
トリを飾るのはアリサ・リュウ。ふわふわスカートの青い衣装がキュートでした。
全員集合のフィナーレは壮観。マリニン&アダム・シャオ・イム・ファのWバックフリップ! かおちゃんのセルフィーの腕前も素晴らしい! ここでもペトロシアンに気を配るアンバー姐さん、さすがです。
終わるのが名残惜しい、最高のエキシビションでした。
かくして、オリンピック終了。
ロスです…。
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フィギュア競技最後を飾る女子。SPは、2番滑走のAINアデリア・ペトロシアン選手が予想どおり高得点を出し、ずっと暫定1位席に座り続けることに。
中井選手が登場したのは第4G1番滑走。いきなり3Aを成功させました。続く3Lz+3Tも成功、高い加点を得ます。最後の3Loも完璧に決め、スピン・ステップもすべてレベル4。ジャンプを着氷するたび笑顔が増し、初出場とは思えないほどのびのびした演技を披露しました。その得点はPBの78.71点。暫定1位に躍り出ます。
いよいよ最終G。最初に登場したのはアリサ・リュウ選手。団体戦ではややミスのあったSPですが、この日はコンビネーションに回転不足がついた以外はほぼ完璧。しっとり穏やかに演じ切り観る者を魅了しました。PBの76.59点も中井選手は抜けず。暫定2位となります。
続いて同じアメリカのイザボー・レビト選手。ふわりと柔らかいジャンプと美しいスケーティングは健在。しかし回転不足とレベルの取りこぼしがあり、得点を伸ばせません。
続いてジョージアのアナスタシア・グバノワ選手は、終わってみれば上位ではペトロシアン&中井両選手とともに唯一回転不足を取られないジャンプでPBを更新します。
そして、坂本選手がリンクイン。
男子やペアの選手がミスする姿に、「怖い」「毎日泣いている」と不安を隠そうともしませんでした。最後のオリンピック、金メダルに賭ける思いは誰よりもあったでしょう。表情は硬く、緊張感は隠し切れませんでした。それでも最初の3Lz(!は付いたものの)を着氷すると、2Aはプロトコルにほぼ5が並ぶ素晴らしいジャンプに。スケートの伸びは最後まで欠けることなく、最後のスピンを終えると何度も大きなガッツポーズを繰り出しました。しかし3-3で回転不足を取られ、0.64点及ばず暫定2位となります。は? 回転不足? どこが? なんで?
続いてアンバー・グレン選手。最初の3Aは2点以上加点のつく素晴らしいジャンプに。感動したのも束の間、最後の3Loが2回転になり、0点となってしまいます。あまりにも痛すぎるミスに、キス&クライで涙するグレン選手。メダル候補だっただけに、さらには個人的に応援していた選手だけに、にわかには信じられませんでした。暫定12位の低得点にどよめく会場。
最終滑走は千葉選手。やや異様な雰囲気の中でしたが、浜田コーチの思いきり身を乗り出してのおでこゴツンに表情がやわらぎました。GPF以降、全日本でも不安を抱えたような硬い演技が続いていましたが、この大舞台で千葉選手らしさが戻りました! 最初の3-3はやや詰まって回転不足を取られたものの、残りのジャンプもすべて着氷。スピンもステップも音楽に乗り、会場を沸かせます。最後のスピンはオール5!!! 演技構成点も高い評価を受け、74.00点と暫定4位となりました。
日本の3選手がいずれも個性を発揮し、高得点を得たSPとなりました!
いよいよ、運命のFS。
まさかの第2G滑走となったアンバー・グレン選手。今日も3Aは大きな加点のつく素晴らしさ。続く3-3も見事に決めます。どんどんボルテージが上がる観客席。その拍手に背を押されるかのように、グレン選手は羽ばたきました。スケール感たっぷりのスケーティングに高くて大きなジャンプ。これぞアンバーのスケート! 最後の3Loで手をついてふっと微笑むも、スピンを終えてのフィニッシュはいつもの凛とした彼女でした。147.52点の高得点をたたき出します。
第3Gも見ごたえある演技が続きました。ソフィア・サモデルキナ選手やニーナ・ペトロキナ選手のノーミス演技。イ・ヘイン選手の感情豊かなステップ。イザボー・レビト選手は最初に転倒しながらもしなやかなスケートを見せてくれました。怪我から復活のルナ・ヘンドリクス選手はパーフェクトとはいきませんでしたが、まだまだ滑る姿を見ていたい演技でした。
そして、最終Gの滑走です。
衣装の背中が印象的なグバノワ選手。3Lzのステップアウトで減点を受けるも、抒情的な表現力が素敵でした。
ペトロシアン選手は女子で唯一の4回転にチャレンジします。冒頭の4Tで転倒したことで次のジャンプは3回転に変更。しっかり着氷し、その後は確実に加点を重ねます。4年前、時代を席捲したロシアも今回出場者は1人。しかもはじめての国際大会。今のロシアのスケーターがどのような演技をするのか、興味がありました。感想としては、「やっと私の好きなフィギュアに戻ってくれた」です。4年前の北京、まだ幼さの残る少女たちの技術力は確かに凄まじかった。ただ、フィギュアに限らず、オリンピックは選手たちの夢の舞台で、彼ら彼女らの生きざまを表現する場所のはず。彼女たちからそれは感じられませんでした。フィギュアへの愛も、日々の苦しみも、その体温すら感じませんでした。技術は進化していくべきだ、ただこれは正常な進化なのだろうか。悶々としながら応援する、そうしたタイミングでの転機でした。北京以降の4年間、ロシアが排除されたフィギュア界は、高難度ジャンプだけではないスピードやつなぎの濃さといった技術力と、音楽を表現しながらみずからの個性を発揮する芸術性、両方を備えた選手が高く評価を受ける方向へ舵を向けました。ロシアのスケーターたちは、それらを習得する前に引退を強いられるのです。それが正常な状態であるはずがない。
ペトロシアンも、もし何ごとも起きなければきっとオリンピックには出ることなく、ただ消費されるだけの選手だったでしょう。
技術力はさすがでした。身体能力の高さはずば抜けているし、スケートも上手い。ただ、やっぱり、ここ最近のフィギュアを観ている身からするともの足りない。今のフィギュアの潮流から乖離したロシアのスケート界の現状を垣間見た気がしました。
4回転を決めて高得点を得ていたら結果はわかりませんでしたが、グレン選手を抜くことはできず暫定2位に。
ペトロシアン選手の得点が出るまで、やや時間を要しました。次に滑る千葉選手への影響は果たしてなかったのかどうか。
今日もコーチとルーティンをこなし、開始位置へ。最初の3F-3Tを着氷し、続く3Lo、3S。全日本でも意識して見えた2本のジャンプをしっかり決め、「よしっ!」と、拳に力が入ります。なめらかなスケーティングも美しいポジションのスピンも、最後まで千葉選手らしさは失われませんでした。3つの回転不足で得点は伸びを欠くも、合計はPBの217.88点。暫定1位に躍り出ます。
続いてはSP3位のアリサ・リュウ選手。『マッカーサー・パーク』の音楽が始まると、そこはもうアリサの世界。彼女の魅力がスケートの軌跡からこぼれるようにリンクを満たしていきます。スケートが楽しい、観客と一体になるこの瞬間が楽しくてたまらない。そんな声が聞こえてきそうな、こちらもしあわせになる4分間でした。競技前、「メダルはいらない」と豪語していたリュウ選手。それは偽らざる本音でしょう。北京以降、さまざまな経験を経てリンクに戻ってきた彼女は、メダルにも国の威信にも縛られない、自由なスケートを手に入れていました。こちらもオリンピックのメダルマッチであることを忘れるほどののショータイムでした。
高得点で千葉選手を抜き首位に立ちます。
坂本選手の顔はあきらかにこわばっていました。それでも中野コーチに力強く送り出され、『愛の讃歌』が鳴り始めると、一瞬で柔らかい表情に変わります。
まるでメロディーを奏でるかのような流れのあるジャンプ。スピンやステップのみならず助走すらも表現のひとつになる、濃密で雄大、それが坂本花織のスケート。
途中ですでに泣いていました。まさに集大成と感じる演技に、もう坂本選手が頂点に立つことを信じて疑わなかったのです。
ところが後半の3F-3T。3Fの着氷がうまくいかず、3Tにつながりませんでした。最後の3Loにコンビネーションをつけるのかという実況には、リカバリーをほとんど見たことがないだけに不安になりましたが、坂本選手はそれを選びませんでした。最後のスピンを完遂し、フィニッシュポーズを解いた坂本選手は複雑な笑顔で何度かうなずきました。しかしリンクサイドに戻ってくると、中野コーチの肩に顔をうずめて涙。
得点源であったはずのコンビネーションが単独となった3Fは、リピート扱いになってしまいます。リカバリーできていたら…1Tだけでも付けられていたら…いろいろ考えが渦巻きました。解説の鈴木明子さんが、「3Loにコンビネーションをつけたら後のスピンに影響するからできなかった」と言いました。坂本選手のプログラムは、そんな余白など残されていない、最高密度を全力疾走で駆け抜けなければならない4分間だったのです。坂本花織は最後まで坂本花織であろうとした。そしてそれこそが、表現者としての矜持だった。
演技構成点は唯一9点台を並べる高得点でした。1本ジャンプが抜けても合計は224.90点。しかしリュウ選手には1.89点及びませんでした。
最終滑走は中井選手。てっきりプレッシャーを抱えているのかと思いきや、まったくそれを感じさせない笑顔でリンクイン。今日もイキイキと滑り始めた中井選手、今日も3Aを見事に成功させました! しかし続く3-3は2本目が2回転に。それでも最後までのびのびあかるく、中井選手らしさを失いませんでした。
フィニッシュ後、片手を口元に当てて首を傾げるなんとも可愛らしい仕草を見せましたが、3Aはともかく他の部分で成功した確信がなかったのでしょう。実際、回転不足もあってFSの得点は9位。会場からはブーイングのような声も響きました。中井選手もコーチも無反応。まあまあ、仕方ないか…そんな様子に見えました。ちょっと! 横に「3」ってあるよ!
気づいたのは数秒後。「あれっ、3位?」と中井選手が確認を求めたのは1位席にいるリュウ選手。「そうよ、あなたが3位よ!」の答えに思わず飛び出した中井選手。コーチそっちのけで抱き合うふたり。リュウ選手は、笑顔いっぱいの中井選手の両手を高く掲げました。ひとりそっと涙を拭う中庭コーチ。美しい光景でした。
歓喜の一方で、その隣には悔し涙がありました。4位に落ちてしまった千葉選手。肩を落として後ろへ引き上げていく姿がちらりと映りました。その画面の中心には泣き崩れる坂本選手。
中井選手の演技中、こらえきれない千葉選手と坂本選手が抱き合って泣いていました。言葉もなく、ただ涙を流すだけだったと後で語っていました。外から見た限りでは、メダルは無理だと悟った千葉選手を坂本選手が慰めているようにも映りますが、金メダルを逃した坂本選手の無念さに千葉選手が共感したゆえの涙という想像もありますし、互いに完璧とはいかなかった演技を悔やむ一方やりきることはやりきったというないまぜの感情も垣間見えます。外部が理解することは不可能ですし、その心中をうまく言語化することは本人たちにもできないように思います。
日本人が2人もメダルを取ってすごくうれしい、けれど同時にとても悲しい。こちらも両方の涙を流すのみでした。
表彰台、ともすれば涙こぼれる坂本選手。それでもリュウ選手を讃え、メダルにぬいぐるみを固定してあげる姿がありました。中井選手をからかうように頬をつまんだり、カーペットにひっかからないよう声をかけたり、銅メダリストに任されるセルフィーを代わってあげたり、気配りを忘れないいつもの坂本選手でした。だからこそ、いちばん高い場所に立ってほしかったと思わずにはいられませんでした。それでもやはり、今回はリュウ選手が素晴らしすぎたと言わざるをえません。その出自まで詳らかに報道されて思うところがないとは思えませんが、すべてが自分の人生の物語の一部であり、その作者はあくまで自分だ。誰にも何にも惑わされない、解放感にあふれていました。自分の金メダルより先に中井選手を祝福したのも彼女らしいし、それが彼女の生き方。
「スケートが好きだ」という気持ちが伝わるスケーターが金メダリストになったオリンピックで良かったとも思います。もう「からっぽ」なんて言葉は聞きたくありません。
なごやかな表彰式のあとは、終わってしまった喪失感とともに、しあわせな時間を過ごすことができた満足感がありました。日本選手3人とも、ベストを尽くしました。もちろん悔しい思いもあるだろうけれど、2・3・4位とは過去に類を見ない好成績です。しかも国内にはまだまだ代表クラスの選手がいます。坂本選手が現役を去っても、日本選手が世界のトップを席捲し続けるであろうことは間違いありません。4年後、千葉選手も中井選手もオリンピックに出られるとは限りません。それでもまた、ふたりがリベンジを果たすところを観てみたい。そう願わずにはいられません。
試合後のSNSで、涙する千葉選手に寄り添うグレン選手の写真を目にしました。また、泣いている坂本選手を撮影しようとしたカメラクルーから守ってくれていたことも知りました。ありがとう、アンバー。演技も人柄も、本当に素敵です。
中井選手が登場したのは第4G1番滑走。いきなり3Aを成功させました。続く3Lz+3Tも成功、高い加点を得ます。最後の3Loも完璧に決め、スピン・ステップもすべてレベル4。ジャンプを着氷するたび笑顔が増し、初出場とは思えないほどのびのびした演技を披露しました。その得点はPBの78.71点。暫定1位に躍り出ます。
いよいよ最終G。最初に登場したのはアリサ・リュウ選手。団体戦ではややミスのあったSPですが、この日はコンビネーションに回転不足がついた以外はほぼ完璧。しっとり穏やかに演じ切り観る者を魅了しました。PBの76.59点も中井選手は抜けず。暫定2位となります。
続いて同じアメリカのイザボー・レビト選手。ふわりと柔らかいジャンプと美しいスケーティングは健在。しかし回転不足とレベルの取りこぼしがあり、得点を伸ばせません。
続いてジョージアのアナスタシア・グバノワ選手は、終わってみれば上位ではペトロシアン&中井両選手とともに唯一回転不足を取られないジャンプでPBを更新します。
そして、坂本選手がリンクイン。
男子やペアの選手がミスする姿に、「怖い」「毎日泣いている」と不安を隠そうともしませんでした。最後のオリンピック、金メダルに賭ける思いは誰よりもあったでしょう。表情は硬く、緊張感は隠し切れませんでした。それでも最初の3Lz(!は付いたものの)を着氷すると、2Aはプロトコルにほぼ5が並ぶ素晴らしいジャンプに。スケートの伸びは最後まで欠けることなく、最後のスピンを終えると何度も大きなガッツポーズを繰り出しました。しかし3-3で回転不足を取られ、0.64点及ばず暫定2位となります。は? 回転不足? どこが? なんで?
続いてアンバー・グレン選手。最初の3Aは2点以上加点のつく素晴らしいジャンプに。感動したのも束の間、最後の3Loが2回転になり、0点となってしまいます。あまりにも痛すぎるミスに、キス&クライで涙するグレン選手。メダル候補だっただけに、さらには個人的に応援していた選手だけに、にわかには信じられませんでした。暫定12位の低得点にどよめく会場。
最終滑走は千葉選手。やや異様な雰囲気の中でしたが、浜田コーチの思いきり身を乗り出してのおでこゴツンに表情がやわらぎました。GPF以降、全日本でも不安を抱えたような硬い演技が続いていましたが、この大舞台で千葉選手らしさが戻りました! 最初の3-3はやや詰まって回転不足を取られたものの、残りのジャンプもすべて着氷。スピンもステップも音楽に乗り、会場を沸かせます。最後のスピンはオール5!!! 演技構成点も高い評価を受け、74.00点と暫定4位となりました。
日本の3選手がいずれも個性を発揮し、高得点を得たSPとなりました!
いよいよ、運命のFS。
まさかの第2G滑走となったアンバー・グレン選手。今日も3Aは大きな加点のつく素晴らしさ。続く3-3も見事に決めます。どんどんボルテージが上がる観客席。その拍手に背を押されるかのように、グレン選手は羽ばたきました。スケール感たっぷりのスケーティングに高くて大きなジャンプ。これぞアンバーのスケート! 最後の3Loで手をついてふっと微笑むも、スピンを終えてのフィニッシュはいつもの凛とした彼女でした。147.52点の高得点をたたき出します。
第3Gも見ごたえある演技が続きました。ソフィア・サモデルキナ選手やニーナ・ペトロキナ選手のノーミス演技。イ・ヘイン選手の感情豊かなステップ。イザボー・レビト選手は最初に転倒しながらもしなやかなスケートを見せてくれました。怪我から復活のルナ・ヘンドリクス選手はパーフェクトとはいきませんでしたが、まだまだ滑る姿を見ていたい演技でした。
そして、最終Gの滑走です。
衣装の背中が印象的なグバノワ選手。3Lzのステップアウトで減点を受けるも、抒情的な表現力が素敵でした。
ペトロシアン選手は女子で唯一の4回転にチャレンジします。冒頭の4Tで転倒したことで次のジャンプは3回転に変更。しっかり着氷し、その後は確実に加点を重ねます。4年前、時代を席捲したロシアも今回出場者は1人。しかもはじめての国際大会。今のロシアのスケーターがどのような演技をするのか、興味がありました。感想としては、「やっと私の好きなフィギュアに戻ってくれた」です。4年前の北京、まだ幼さの残る少女たちの技術力は確かに凄まじかった。ただ、フィギュアに限らず、オリンピックは選手たちの夢の舞台で、彼ら彼女らの生きざまを表現する場所のはず。彼女たちからそれは感じられませんでした。フィギュアへの愛も、日々の苦しみも、その体温すら感じませんでした。技術は進化していくべきだ、ただこれは正常な進化なのだろうか。悶々としながら応援する、そうしたタイミングでの転機でした。北京以降の4年間、ロシアが排除されたフィギュア界は、高難度ジャンプだけではないスピードやつなぎの濃さといった技術力と、音楽を表現しながらみずからの個性を発揮する芸術性、両方を備えた選手が高く評価を受ける方向へ舵を向けました。ロシアのスケーターたちは、それらを習得する前に引退を強いられるのです。それが正常な状態であるはずがない。
ペトロシアンも、もし何ごとも起きなければきっとオリンピックには出ることなく、ただ消費されるだけの選手だったでしょう。
技術力はさすがでした。身体能力の高さはずば抜けているし、スケートも上手い。ただ、やっぱり、ここ最近のフィギュアを観ている身からするともの足りない。今のフィギュアの潮流から乖離したロシアのスケート界の現状を垣間見た気がしました。
4回転を決めて高得点を得ていたら結果はわかりませんでしたが、グレン選手を抜くことはできず暫定2位に。
ペトロシアン選手の得点が出るまで、やや時間を要しました。次に滑る千葉選手への影響は果たしてなかったのかどうか。
今日もコーチとルーティンをこなし、開始位置へ。最初の3F-3Tを着氷し、続く3Lo、3S。全日本でも意識して見えた2本のジャンプをしっかり決め、「よしっ!」と、拳に力が入ります。なめらかなスケーティングも美しいポジションのスピンも、最後まで千葉選手らしさは失われませんでした。3つの回転不足で得点は伸びを欠くも、合計はPBの217.88点。暫定1位に躍り出ます。
続いてはSP3位のアリサ・リュウ選手。『マッカーサー・パーク』の音楽が始まると、そこはもうアリサの世界。彼女の魅力がスケートの軌跡からこぼれるようにリンクを満たしていきます。スケートが楽しい、観客と一体になるこの瞬間が楽しくてたまらない。そんな声が聞こえてきそうな、こちらもしあわせになる4分間でした。競技前、「メダルはいらない」と豪語していたリュウ選手。それは偽らざる本音でしょう。北京以降、さまざまな経験を経てリンクに戻ってきた彼女は、メダルにも国の威信にも縛られない、自由なスケートを手に入れていました。こちらもオリンピックのメダルマッチであることを忘れるほどののショータイムでした。
高得点で千葉選手を抜き首位に立ちます。
坂本選手の顔はあきらかにこわばっていました。それでも中野コーチに力強く送り出され、『愛の讃歌』が鳴り始めると、一瞬で柔らかい表情に変わります。
まるでメロディーを奏でるかのような流れのあるジャンプ。スピンやステップのみならず助走すらも表現のひとつになる、濃密で雄大、それが坂本花織のスケート。
途中ですでに泣いていました。まさに集大成と感じる演技に、もう坂本選手が頂点に立つことを信じて疑わなかったのです。
ところが後半の3F-3T。3Fの着氷がうまくいかず、3Tにつながりませんでした。最後の3Loにコンビネーションをつけるのかという実況には、リカバリーをほとんど見たことがないだけに不安になりましたが、坂本選手はそれを選びませんでした。最後のスピンを完遂し、フィニッシュポーズを解いた坂本選手は複雑な笑顔で何度かうなずきました。しかしリンクサイドに戻ってくると、中野コーチの肩に顔をうずめて涙。
得点源であったはずのコンビネーションが単独となった3Fは、リピート扱いになってしまいます。リカバリーできていたら…1Tだけでも付けられていたら…いろいろ考えが渦巻きました。解説の鈴木明子さんが、「3Loにコンビネーションをつけたら後のスピンに影響するからできなかった」と言いました。坂本選手のプログラムは、そんな余白など残されていない、最高密度を全力疾走で駆け抜けなければならない4分間だったのです。坂本花織は最後まで坂本花織であろうとした。そしてそれこそが、表現者としての矜持だった。
演技構成点は唯一9点台を並べる高得点でした。1本ジャンプが抜けても合計は224.90点。しかしリュウ選手には1.89点及びませんでした。
最終滑走は中井選手。てっきりプレッシャーを抱えているのかと思いきや、まったくそれを感じさせない笑顔でリンクイン。今日もイキイキと滑り始めた中井選手、今日も3Aを見事に成功させました! しかし続く3-3は2本目が2回転に。それでも最後までのびのびあかるく、中井選手らしさを失いませんでした。
フィニッシュ後、片手を口元に当てて首を傾げるなんとも可愛らしい仕草を見せましたが、3Aはともかく他の部分で成功した確信がなかったのでしょう。実際、回転不足もあってFSの得点は9位。会場からはブーイングのような声も響きました。中井選手もコーチも無反応。まあまあ、仕方ないか…そんな様子に見えました。ちょっと! 横に「3」ってあるよ!
気づいたのは数秒後。「あれっ、3位?」と中井選手が確認を求めたのは1位席にいるリュウ選手。「そうよ、あなたが3位よ!」の答えに思わず飛び出した中井選手。コーチそっちのけで抱き合うふたり。リュウ選手は、笑顔いっぱいの中井選手の両手を高く掲げました。ひとりそっと涙を拭う中庭コーチ。美しい光景でした。
歓喜の一方で、その隣には悔し涙がありました。4位に落ちてしまった千葉選手。肩を落として後ろへ引き上げていく姿がちらりと映りました。その画面の中心には泣き崩れる坂本選手。
中井選手の演技中、こらえきれない千葉選手と坂本選手が抱き合って泣いていました。言葉もなく、ただ涙を流すだけだったと後で語っていました。外から見た限りでは、メダルは無理だと悟った千葉選手を坂本選手が慰めているようにも映りますが、金メダルを逃した坂本選手の無念さに千葉選手が共感したゆえの涙という想像もありますし、互いに完璧とはいかなかった演技を悔やむ一方やりきることはやりきったというないまぜの感情も垣間見えます。外部が理解することは不可能ですし、その心中をうまく言語化することは本人たちにもできないように思います。
日本人が2人もメダルを取ってすごくうれしい、けれど同時にとても悲しい。こちらも両方の涙を流すのみでした。
表彰台、ともすれば涙こぼれる坂本選手。それでもリュウ選手を讃え、メダルにぬいぐるみを固定してあげる姿がありました。中井選手をからかうように頬をつまんだり、カーペットにひっかからないよう声をかけたり、銅メダリストに任されるセルフィーを代わってあげたり、気配りを忘れないいつもの坂本選手でした。だからこそ、いちばん高い場所に立ってほしかったと思わずにはいられませんでした。それでもやはり、今回はリュウ選手が素晴らしすぎたと言わざるをえません。その出自まで詳らかに報道されて思うところがないとは思えませんが、すべてが自分の人生の物語の一部であり、その作者はあくまで自分だ。誰にも何にも惑わされない、解放感にあふれていました。自分の金メダルより先に中井選手を祝福したのも彼女らしいし、それが彼女の生き方。
「スケートが好きだ」という気持ちが伝わるスケーターが金メダリストになったオリンピックで良かったとも思います。もう「からっぽ」なんて言葉は聞きたくありません。
なごやかな表彰式のあとは、終わってしまった喪失感とともに、しあわせな時間を過ごすことができた満足感がありました。日本選手3人とも、ベストを尽くしました。もちろん悔しい思いもあるだろうけれど、2・3・4位とは過去に類を見ない好成績です。しかも国内にはまだまだ代表クラスの選手がいます。坂本選手が現役を去っても、日本選手が世界のトップを席捲し続けるであろうことは間違いありません。4年後、千葉選手も中井選手もオリンピックに出られるとは限りません。それでもまた、ふたりがリベンジを果たすところを観てみたい。そう願わずにはいられません。
試合後のSNSで、涙する千葉選手に寄り添うグレン選手の写真を目にしました。また、泣いている坂本選手を撮影しようとしたカメラクルーから守ってくれていたことも知りました。ありがとう、アンバー。演技も人柄も、本当に素敵です。
「デュアルモーグル…何それ? 個人戦と何が違うの?」と、観るまではハテナだったこの競技。個人戦で金メダルを取れなかった堀島選手を応援したくて観てみました。
早くゴールに滑りこんでも、エアやターン点で差をつければ勝利。審判が1人5点を2人に振り分けるというのもわかりやすい。隣を意識して焦ってしまうと途中棄権。予選シードで初滑走となった堀島選手の1回戦は、相手が途中でコースアウト。しかし堀島選手もバランスを崩してなんと後ろ向きでゴール! 解説の上村愛子さんも思わず笑っちゃうヒヤヒヤもののレースで準々決勝進出となりました。
しかし驚くべきは、それに先行して行われた島川選手のレースでした。相手は世界ランキング1位。しかし勝ち抜いたのは島川選手。相手の転倒によるものでした。何が起こるかわからないデュアルモーグル! これは面白い!
島川選手は準々決勝も19-16で僅差勝ち。堀島選手もなんなく勝ち抜き、残り4人に日本人が2人で日本のメダルは確定です。
島川選手の準決勝の相手は王者・キングズベリー選手。果敢についていくも、相手はやはり強かった。途中で転倒し3位決定戦に回ることになりました。
一方堀島選手は貫録の滑りで決勝進出。
先んじて行われた3位決定戦、島川選手は惜しくも敗れて銅メダルはなりませんでした。競技は会社員との二足のわらじで続けたのだとか。メダルはならずとも、快進撃は強く印象に残りました。
そしていよいよ決勝戦。悲願の金メダルへ向けて、堀島選手がスタートします。ふたりとも凄いスピード。堀島選手がわずか先行するも、コブにスキーを取られてバランスを崩してしまいます。キングズベリー選手はさすがの落ち着きでした。最後まで安定した滑りでゴールし雪面を叩いて喜びを表しました。
堀島選手は金メダルに届きませんでした。それでも決死の覚悟を決めた滑りを見せてくれました。最初はハテナだったデュアルモーグルが、こんなにドキドキワクワクさせてくれる競技だったなんて知りませんでした。にわか的には個人戦より面白かったです。
メダリスト3人とその家族の写真撮影は心あたたまる光景でした。3人のお子さんがみんな同じくらいのチビちゃんで、「パパ友」みたい。こちらも思わず微笑んでしまいました。
スキージャンプをしめくくるのは男子スーパー団体。4人制ではなく2人制の団体戦です。金メダルを目指したラージヒルで逆転を許し涙した二階堂選手。悲願の優勝をかけた戦いに挑みましたが、最後の3回目で飛距離を出したにもかかわらず、荒天のため競技は中止。成績は無効となってしまいました。小林選手も調子を上げていただけに、最後まで行われていれば表彰台に上れていた可能性は高かったのですが、結果は6位。自然の中で行う競技ですし仕方ないと言えばそれまでですが、4年に一度の舞台ですから無念は残ります。しかもその理由にテレビ中継の都合が絡んでいたとなれば、なんだかモヤモヤ。オリンピックにはつきものなのでしょうが…。
早くゴールに滑りこんでも、エアやターン点で差をつければ勝利。審判が1人5点を2人に振り分けるというのもわかりやすい。隣を意識して焦ってしまうと途中棄権。予選シードで初滑走となった堀島選手の1回戦は、相手が途中でコースアウト。しかし堀島選手もバランスを崩してなんと後ろ向きでゴール! 解説の上村愛子さんも思わず笑っちゃうヒヤヒヤもののレースで準々決勝進出となりました。
しかし驚くべきは、それに先行して行われた島川選手のレースでした。相手は世界ランキング1位。しかし勝ち抜いたのは島川選手。相手の転倒によるものでした。何が起こるかわからないデュアルモーグル! これは面白い!
島川選手は準々決勝も19-16で僅差勝ち。堀島選手もなんなく勝ち抜き、残り4人に日本人が2人で日本のメダルは確定です。
島川選手の準決勝の相手は王者・キングズベリー選手。果敢についていくも、相手はやはり強かった。途中で転倒し3位決定戦に回ることになりました。
一方堀島選手は貫録の滑りで決勝進出。
先んじて行われた3位決定戦、島川選手は惜しくも敗れて銅メダルはなりませんでした。競技は会社員との二足のわらじで続けたのだとか。メダルはならずとも、快進撃は強く印象に残りました。
そしていよいよ決勝戦。悲願の金メダルへ向けて、堀島選手がスタートします。ふたりとも凄いスピード。堀島選手がわずか先行するも、コブにスキーを取られてバランスを崩してしまいます。キングズベリー選手はさすがの落ち着きでした。最後まで安定した滑りでゴールし雪面を叩いて喜びを表しました。
堀島選手は金メダルに届きませんでした。それでも決死の覚悟を決めた滑りを見せてくれました。最初はハテナだったデュアルモーグルが、こんなにドキドキワクワクさせてくれる競技だったなんて知りませんでした。にわか的には個人戦より面白かったです。
メダリスト3人とその家族の写真撮影は心あたたまる光景でした。3人のお子さんがみんな同じくらいのチビちゃんで、「パパ友」みたい。こちらも思わず微笑んでしまいました。
スキージャンプをしめくくるのは男子スーパー団体。4人制ではなく2人制の団体戦です。金メダルを目指したラージヒルで逆転を許し涙した二階堂選手。悲願の優勝をかけた戦いに挑みましたが、最後の3回目で飛距離を出したにもかかわらず、荒天のため競技は中止。成績は無効となってしまいました。小林選手も調子を上げていただけに、最後まで行われていれば表彰台に上れていた可能性は高かったのですが、結果は6位。自然の中で行う競技ですし仕方ないと言えばそれまでですが、4年に一度の舞台ですから無念は残ります。しかもその理由にテレビ中継の都合が絡んでいたとなれば、なんだかモヤモヤ。オリンピックにはつきものなのでしょうが…。
フィギュアスケートペアSP。金メダル候補のりくりゅう、初出場のゆなすみが大舞台に挑みます。
全体7番目で登場したゆなすみペア。緊張は隠し切れませんでした。3Loで長岡選手が転倒すると、スロージャンプも転倒。持ち前のスピードもやや疾走感を欠き、本領発揮とはいきませんでした。終わった後、森口選手がなんとか笑顔にさせようとするも長岡選手の表情は硬いまま、演技後のインタビューの長い沈黙には胸が痛くなりました。結果は19組中19位でFSに進めず。あっという間に終わってしまったオリンピック。しかし伸びしろたっぷりのゆなすみペアの挑戦は、ここからが始まりなのだと思いたい。
りくりゅうは最後から2番目の滑走となりました。滑り始めから、団体戦の時のような一体感やスピードをやや欠いているような、若干重たげにも見えました。疲労なのかプレッシャーなのか…少しヒヤヒヤしながら見守っていたことは確かです。それでも3Tが決まってほっとしたのも束の間。続くリフトは、りくりゅうの代名詞と言ってもいい得意技のはずでした。ポジションチェンジに入った瞬間、互いの手がはずれて三浦選手が木原選手の肩に落ちてしまいます。目を疑いました。その後の要素には大きなミスはなかったものの、団体戦には遠く及ばぬ73.11点。木原選手は演技後もキス&クライでも顔を上げられませんでした。
最後に滑ったドイツペアが質の高い演技を披露しトップに立ちます。りくりゅうペアはまさかの5位。FSは中日を設けず、翌日に行われます。青ざめて下を向いていた木原選手がその短い時間で立ち直れるだろうか…信じたい、けれど…。
いや。今まで数々のフィギュアスケーターが、奇跡を見せてきました。りくりゅうもきっとその道をたどるはず。神様どうかお願いします。
正座して見守ったFS。
りくりゅうはいつものようにリンクへ現れました。団体戦で最高得点をたたき出した『グラディエーター』、いざ最後の闘いへ。
動き出しで、その日の調子がなんとなくわかる時があります。
あっ、と光が差した感覚がありました。
冒頭のトリプルツイストをいつもの高さで決めると、続く3T+2A+2Aも揃って着氷。そしてリフト。SPの失敗などかき消えるような美しさ。スロー3Lzも鮮やかに着氷。
震え始めました。手が、そして心が。
ふたりは再びひとつになっていた。いや、それ以上でした。気合いとかプライドとか、そんなものすべて取っぱらった、そこにあったのは珠玉の舞いでした。
コレオシークエンスまであっという間の4分間。
最後のポーズを解いて、崩れ落ちた木原選手。前日からずっと支え続けた三浦選手が、その頭を抱きしめます。まるで宗教画に描かれた聖母のようでした。総立ちの観客が、割れんばかりの拍手で讃えました。ずっとふたりを励まし続け、見守っていたコーチも涙を止められませんでした。もちろん、テレビの前も。
その得点は、世界最高の158.13点。
残りは4組。いずれもりくりゅうの得点を抜くことはできず、最後のドイツペアもわずかなミスで3位となり、りくりゅうの金メダルが確定しました。床にひざまずいて涙を止められない木原選手。「泣いてばっかり~」と笑う三浦選手。ドイツのハーゼ&ボロディンペアが真っ先に祝福しに来てくれました。メテルキナ&ベルラワペアはジョージア初のメダル、しかも銀メダルに歓喜。さまざまに心揺さぶる場面が続きました。
そしてなんといっても、高橋成美さんの解説が感動を倍増させてくれました。ペア転向した木原選手が最初に組んだパートナーです。SP後には「リフト1個分の差だからなんてことない」と言い切りました。そしてFSの演技終了後は「すごいすごいすごい」「宇宙一」と感情爆発。金メダル確定後の涙声にももらい泣き。自分は届かなかった頂点にりくりゅうペアが到達したことには以前「嫉妬心もある」とからっと明かしていましたが、それでも「自分の夢も叶った」と伝えられる、そんなまっすぐななるみちゃんの解説はペア競技を愛する気持ちにあふれていました。「なるちゃんがいたから」という木原選手の言葉にもまた泣かされました。
その日は真っ赤な目で出勤…。帰宅してからも何度も何度も演技を見て、その都度泣きました。
SPであきらめてリアタイしなかった夫。「結果を知ってしまったからもういい」と言っていたくせに、結局録画を見ていました。曰く「もうこんな感動することないで」。
いや、まだまだオリンピックはまだ続きます。
全体7番目で登場したゆなすみペア。緊張は隠し切れませんでした。3Loで長岡選手が転倒すると、スロージャンプも転倒。持ち前のスピードもやや疾走感を欠き、本領発揮とはいきませんでした。終わった後、森口選手がなんとか笑顔にさせようとするも長岡選手の表情は硬いまま、演技後のインタビューの長い沈黙には胸が痛くなりました。結果は19組中19位でFSに進めず。あっという間に終わってしまったオリンピック。しかし伸びしろたっぷりのゆなすみペアの挑戦は、ここからが始まりなのだと思いたい。
りくりゅうは最後から2番目の滑走となりました。滑り始めから、団体戦の時のような一体感やスピードをやや欠いているような、若干重たげにも見えました。疲労なのかプレッシャーなのか…少しヒヤヒヤしながら見守っていたことは確かです。それでも3Tが決まってほっとしたのも束の間。続くリフトは、りくりゅうの代名詞と言ってもいい得意技のはずでした。ポジションチェンジに入った瞬間、互いの手がはずれて三浦選手が木原選手の肩に落ちてしまいます。目を疑いました。その後の要素には大きなミスはなかったものの、団体戦には遠く及ばぬ73.11点。木原選手は演技後もキス&クライでも顔を上げられませんでした。
最後に滑ったドイツペアが質の高い演技を披露しトップに立ちます。りくりゅうペアはまさかの5位。FSは中日を設けず、翌日に行われます。青ざめて下を向いていた木原選手がその短い時間で立ち直れるだろうか…信じたい、けれど…。
いや。今まで数々のフィギュアスケーターが、奇跡を見せてきました。りくりゅうもきっとその道をたどるはず。神様どうかお願いします。
正座して見守ったFS。
りくりゅうはいつものようにリンクへ現れました。団体戦で最高得点をたたき出した『グラディエーター』、いざ最後の闘いへ。
動き出しで、その日の調子がなんとなくわかる時があります。
あっ、と光が差した感覚がありました。
冒頭のトリプルツイストをいつもの高さで決めると、続く3T+2A+2Aも揃って着氷。そしてリフト。SPの失敗などかき消えるような美しさ。スロー3Lzも鮮やかに着氷。
震え始めました。手が、そして心が。
ふたりは再びひとつになっていた。いや、それ以上でした。気合いとかプライドとか、そんなものすべて取っぱらった、そこにあったのは珠玉の舞いでした。
コレオシークエンスまであっという間の4分間。
最後のポーズを解いて、崩れ落ちた木原選手。前日からずっと支え続けた三浦選手が、その頭を抱きしめます。まるで宗教画に描かれた聖母のようでした。総立ちの観客が、割れんばかりの拍手で讃えました。ずっとふたりを励まし続け、見守っていたコーチも涙を止められませんでした。もちろん、テレビの前も。
その得点は、世界最高の158.13点。
残りは4組。いずれもりくりゅうの得点を抜くことはできず、最後のドイツペアもわずかなミスで3位となり、りくりゅうの金メダルが確定しました。床にひざまずいて涙を止められない木原選手。「泣いてばっかり~」と笑う三浦選手。ドイツのハーゼ&ボロディンペアが真っ先に祝福しに来てくれました。メテルキナ&ベルラワペアはジョージア初のメダル、しかも銀メダルに歓喜。さまざまに心揺さぶる場面が続きました。
そしてなんといっても、高橋成美さんの解説が感動を倍増させてくれました。ペア転向した木原選手が最初に組んだパートナーです。SP後には「リフト1個分の差だからなんてことない」と言い切りました。そしてFSの演技終了後は「すごいすごいすごい」「宇宙一」と感情爆発。金メダル確定後の涙声にももらい泣き。自分は届かなかった頂点にりくりゅうペアが到達したことには以前「嫉妬心もある」とからっと明かしていましたが、それでも「自分の夢も叶った」と伝えられる、そんなまっすぐななるみちゃんの解説はペア競技を愛する気持ちにあふれていました。「なるちゃんがいたから」という木原選手の言葉にもまた泣かされました。
その日は真っ赤な目で出勤…。帰宅してからも何度も何度も演技を見て、その都度泣きました。
SPであきらめてリアタイしなかった夫。「結果を知ってしまったからもういい」と言っていたくせに、結局録画を見ていました。曰く「もうこんな感動することないで」。
いや、まだまだオリンピックはまだ続きます。
いよいよ始まりました個人戦、男子フィギュアショートプログラム。
1番滑走はAINのピョートル・グメンニク選手。正直なところ複雑な思いはありますが、さすがロシアといった風格。1番滑走とは思えないクオリティの演技での幕開けとなりました。
日本の3選手でいちばん最初に滑ったのは三浦選手。直前に靴が壊れた影響もあったのか、最初の4回転にミスが出ると転倒もあり80点にも届かず。順位はなんと22位、FSには進出できたもののキス&クライで茫然とする姿には胸が痛くなりました。
最終G1番手に登場した佐藤選手。刃こぼれの影響はないとの報があって安心していました。最初の4Lzは完璧に決まりましたが続く4Tで着氷が乱れてしまいます。冷静に2Tをつけて最小限のミスにとどめたものの9位発進となりました。
直後のアダム・シャオ・イム・ファ選手が芸術的で素晴らしい演技を披露し100点超え。そしてトリ前に登場したのはイリア・マリニン選手。公式練習を回避したことで2本滑った団体戦の疲労が案じられましたが、終わってみればマリニン劇場。4Aこそ回避したものの、4F・4Lz+3Tは高い加点を引き出し、バックフリップも決めて観衆の心をものにしました。108点をたたき出しトップに立ちます。
最終滑走は鍵山選手。マリニン選手にくらいつくためにはミスは許されません。
団体戦から、ずいぶん表情があかるくなったと感じました。今シーズンはなかなかプログラムを完遂できず、全日本など優勝したにもかかわらず悔し泣きで立ち上がれませんでした。しかしいざ大舞台を迎え、腹をくくるところがあったのか。もちろん緊張はしていたでしょうが、滑走前の笑顔は柔らかく、3Aでミスをしてもひきずることなく、音楽を奏でるようなステップでは満点評価を引き出しました。演技構成点も高得点を獲得。マリニン選手と約5点差も、キス&クライの表情はあかるいままでした。
順位関係なく、自分が納得できる演技をして歓喜する姿には心動かされます。
ウクライナのマルサク選手は、最前線で戦う父に勧められた楽曲で父への愛を表現しました。涙を誘う演技で自己ベストを10点以上更新。アメリカのナウモフ選手がキス&クライで掲げたのは、昨年1月に飛行機事故で亡くなった両親の写真。ナウモフ選手も自己ベストを大幅に更新する、心を打つ演技でした。
誰もが悔いのない演技をしてほしい。望むのはそれだけです。
巻き返しを期待した三浦選手。冒頭の4Loを決めると、続く4Sは転倒するもののその後は挽回に成功。最後まで三浦選手らしい気迫に満ちた演技を披露し、フィニッシュ後はガッツポーズ。得点は登場順もあってか伸びを欠いたのが残念ですが、それでも今後につながるオリンピックだったと思います。
16番目に登場した佐藤選手。今大会二度目の『火の鳥』は、今回も完璧な4Lzで幕を開けます。4Fを回避した3Aからのコンビネーションも成功。4T+3Tも高い加点を獲得します。最後の3Lzでバランスを崩した時はドキリとしましたが、ステップ前の解説町田さんの「思う存分、羽ばたけ!」の声にはこちらも握る拳に力が入りました。佐藤選手は最後まで戦い抜き、団体戦には及ばなかったものの高得点を獲得。暫定1位に立ちました。
その後の誰も佐藤選手を抜けないまま、いよいよ最終Gを迎えます。最初に登場したのはチャ・ジュンファン選手。2本目のジャンプで大きく転倒するもその後は巻き返し、美しいスケーティングで観客を魅了します。しかし合計点数は佐藤選手に1点及ばず。
続いてミハイル・シャイドロフ選手。いきなり3A+1Eu+4Sという高難度ジャンプを成功させると、4Lzこそ着氷が乱れたものの4Tは成功。続くジャンプは解説も言葉を失う、いきなり組み込んできた4F。後半も4T+3Tを決め、残りのジャンプもすべて成功。圧巻のプログラムでした。演技後感極まるシャイドロフ選手に観客の拍手が鳴りやみません。合計はSBの291.58点、佐藤選手を上回ります。
SP4位で地元のダニエル・グラスル選手はジャンプにややミスが目立ち、得点を伸ばせません。
いよいよトップ3の登場。アダム・シャオ・イム・ファ選手はSPとFSの両方を完遂できない印象ですが、今大会もそろえられませんでした。冒頭のジャンプミスからなかなか立て直すことができず、大きく順位を落としてしまいます。
そして、鍵山選手の登場です。事前に「楽しみたい」と話していたとおり、その表情は落ち着いて見えました。しかし冒頭の4S。いつもは目の覚めるような美しさで着氷するはずが、乱れてしまいます。さらに今季初めて組み込んだ4Fが決まったかと思った瞬間に転倒。コンビネーションも2つ目が2回転になるなど鍵山選手らしからぬミスが続きます。しかしレベル4を獲得したスピンを始め、イナバウアーで魅せるコレオシークエンスや世界一のステップは健在。観衆を魅了しフィニッシュ。しかしそこに開始前の笑顔はありませんでした。
ミスこそあったものの合計280.06点で暫定2位。鍵山選手は顔を覆いました。
いよいよ最終滑走。この時点で、マリニン選手の金メダルは微塵も疑いませんでした。最初の4Fも完璧でした。
しかしそこからは、信じられない場面の連続でした。いよいよお目見えとなるはずだった4Aが1回転に。4Lzは成功させたものの、4Loが2Loとなって以降、観ている者と同じくマリニン選手自身も動揺しているように見えました。スピンもステップも精彩を欠き、後半の4Lzはコンビネーションにできないどころか転倒。4Sも回り切れずに転倒。こんなマリニン選手は見たことがなく、町田さんもかける言葉が見つからないようでした。誰もが茫然としたまま得点が発表されましたが、その横に表示されたのはFS「15」、そして合計「8」。世界に君臨し続けたマリニン選手の順位とはにわかに思えません。
しかしその瞬間は、メダリストが決まった瞬間でもありました。
ミハイル・シャイドロフ選手はカザフスタンで初の金メダリストとなりました。メダリストとしては2人目。1人目はソチ五輪銅メダリストのデニス・テンさんです。きっとどこかで観ていたであろう空に思いを馳せずにはいられません。高難度ジャンプに挑み見事成功させたシャイドロフ選手のチャレンジ精神にあっぱれです。
そして鍵山選手は、このまま2位か3位で終わってもきっと喜ばなかっただろうと思います。しかし彼は満開の笑顔だった。それは佐藤選手が銅メダルを獲得したから。佐藤選手が暫定席に座った時点で残りは8人。最後までそこにいるとは考えてもいませんでした。佐藤選手もおそらく同じだったのでしょう。鍵山選手に声をかけられて、涙が止まりませんでした。団体戦の直後も同じように涙した佐藤選手。悔し涙のままで終わらず本当に良かったと思います。鍵山&佐藤両選手が表彰台に並び、ともに喜び、讃え合う。そんな場面が見られてこちらもうれしい。
一方、マリニン選手の胸中を思うと複雑です。平昌五輪のネイサン・チェン選手を思い出しました。彼もはじめてのオリンピックで金メダル候補に挙げられながら、らしからぬミスを連発し表彰台すら上れませんでした。金メダル確実と言われる重圧、団体戦からのハードスケジュールは、初出場のマリニン選手にとっては何もかもが未体験の世界。しかしネイサン・チェンは見事次の大会で金メダルに輝きました。もちろん4年は決して短い年月ではありませんが、マリニン選手もきっと次のオリンピックでは輝ける。神様はきっとそんな結末を用意しているはずです。
ところで、佐藤選手の銅メダルが決まった瞬間、誰もが彼の姿を探したに違いない。「コーチ…日下コーチは? どこ!?」
しかしその後、大喜びで場内一周するコーチの姿を捉えた動画がSNSに上がっていました。もはやその人気は国際的。関係者の誰か、裏で決定的瞬間を撮っていなかったのかなあ。
1番滑走はAINのピョートル・グメンニク選手。正直なところ複雑な思いはありますが、さすがロシアといった風格。1番滑走とは思えないクオリティの演技での幕開けとなりました。
日本の3選手でいちばん最初に滑ったのは三浦選手。直前に靴が壊れた影響もあったのか、最初の4回転にミスが出ると転倒もあり80点にも届かず。順位はなんと22位、FSには進出できたもののキス&クライで茫然とする姿には胸が痛くなりました。
最終G1番手に登場した佐藤選手。刃こぼれの影響はないとの報があって安心していました。最初の4Lzは完璧に決まりましたが続く4Tで着氷が乱れてしまいます。冷静に2Tをつけて最小限のミスにとどめたものの9位発進となりました。
直後のアダム・シャオ・イム・ファ選手が芸術的で素晴らしい演技を披露し100点超え。そしてトリ前に登場したのはイリア・マリニン選手。公式練習を回避したことで2本滑った団体戦の疲労が案じられましたが、終わってみればマリニン劇場。4Aこそ回避したものの、4F・4Lz+3Tは高い加点を引き出し、バックフリップも決めて観衆の心をものにしました。108点をたたき出しトップに立ちます。
最終滑走は鍵山選手。マリニン選手にくらいつくためにはミスは許されません。
団体戦から、ずいぶん表情があかるくなったと感じました。今シーズンはなかなかプログラムを完遂できず、全日本など優勝したにもかかわらず悔し泣きで立ち上がれませんでした。しかしいざ大舞台を迎え、腹をくくるところがあったのか。もちろん緊張はしていたでしょうが、滑走前の笑顔は柔らかく、3Aでミスをしてもひきずることなく、音楽を奏でるようなステップでは満点評価を引き出しました。演技構成点も高得点を獲得。マリニン選手と約5点差も、キス&クライの表情はあかるいままでした。
順位関係なく、自分が納得できる演技をして歓喜する姿には心動かされます。
ウクライナのマルサク選手は、最前線で戦う父に勧められた楽曲で父への愛を表現しました。涙を誘う演技で自己ベストを10点以上更新。アメリカのナウモフ選手がキス&クライで掲げたのは、昨年1月に飛行機事故で亡くなった両親の写真。ナウモフ選手も自己ベストを大幅に更新する、心を打つ演技でした。
誰もが悔いのない演技をしてほしい。望むのはそれだけです。
巻き返しを期待した三浦選手。冒頭の4Loを決めると、続く4Sは転倒するもののその後は挽回に成功。最後まで三浦選手らしい気迫に満ちた演技を披露し、フィニッシュ後はガッツポーズ。得点は登場順もあってか伸びを欠いたのが残念ですが、それでも今後につながるオリンピックだったと思います。
16番目に登場した佐藤選手。今大会二度目の『火の鳥』は、今回も完璧な4Lzで幕を開けます。4Fを回避した3Aからのコンビネーションも成功。4T+3Tも高い加点を獲得します。最後の3Lzでバランスを崩した時はドキリとしましたが、ステップ前の解説町田さんの「思う存分、羽ばたけ!」の声にはこちらも握る拳に力が入りました。佐藤選手は最後まで戦い抜き、団体戦には及ばなかったものの高得点を獲得。暫定1位に立ちました。
その後の誰も佐藤選手を抜けないまま、いよいよ最終Gを迎えます。最初に登場したのはチャ・ジュンファン選手。2本目のジャンプで大きく転倒するもその後は巻き返し、美しいスケーティングで観客を魅了します。しかし合計点数は佐藤選手に1点及ばず。
続いてミハイル・シャイドロフ選手。いきなり3A+1Eu+4Sという高難度ジャンプを成功させると、4Lzこそ着氷が乱れたものの4Tは成功。続くジャンプは解説も言葉を失う、いきなり組み込んできた4F。後半も4T+3Tを決め、残りのジャンプもすべて成功。圧巻のプログラムでした。演技後感極まるシャイドロフ選手に観客の拍手が鳴りやみません。合計はSBの291.58点、佐藤選手を上回ります。
SP4位で地元のダニエル・グラスル選手はジャンプにややミスが目立ち、得点を伸ばせません。
いよいよトップ3の登場。アダム・シャオ・イム・ファ選手はSPとFSの両方を完遂できない印象ですが、今大会もそろえられませんでした。冒頭のジャンプミスからなかなか立て直すことができず、大きく順位を落としてしまいます。
そして、鍵山選手の登場です。事前に「楽しみたい」と話していたとおり、その表情は落ち着いて見えました。しかし冒頭の4S。いつもは目の覚めるような美しさで着氷するはずが、乱れてしまいます。さらに今季初めて組み込んだ4Fが決まったかと思った瞬間に転倒。コンビネーションも2つ目が2回転になるなど鍵山選手らしからぬミスが続きます。しかしレベル4を獲得したスピンを始め、イナバウアーで魅せるコレオシークエンスや世界一のステップは健在。観衆を魅了しフィニッシュ。しかしそこに開始前の笑顔はありませんでした。
ミスこそあったものの合計280.06点で暫定2位。鍵山選手は顔を覆いました。
いよいよ最終滑走。この時点で、マリニン選手の金メダルは微塵も疑いませんでした。最初の4Fも完璧でした。
しかしそこからは、信じられない場面の連続でした。いよいよお目見えとなるはずだった4Aが1回転に。4Lzは成功させたものの、4Loが2Loとなって以降、観ている者と同じくマリニン選手自身も動揺しているように見えました。スピンもステップも精彩を欠き、後半の4Lzはコンビネーションにできないどころか転倒。4Sも回り切れずに転倒。こんなマリニン選手は見たことがなく、町田さんもかける言葉が見つからないようでした。誰もが茫然としたまま得点が発表されましたが、その横に表示されたのはFS「15」、そして合計「8」。世界に君臨し続けたマリニン選手の順位とはにわかに思えません。
しかしその瞬間は、メダリストが決まった瞬間でもありました。
ミハイル・シャイドロフ選手はカザフスタンで初の金メダリストとなりました。メダリストとしては2人目。1人目はソチ五輪銅メダリストのデニス・テンさんです。きっとどこかで観ていたであろう空に思いを馳せずにはいられません。高難度ジャンプに挑み見事成功させたシャイドロフ選手のチャレンジ精神にあっぱれです。
そして鍵山選手は、このまま2位か3位で終わってもきっと喜ばなかっただろうと思います。しかし彼は満開の笑顔だった。それは佐藤選手が銅メダルを獲得したから。佐藤選手が暫定席に座った時点で残りは8人。最後までそこにいるとは考えてもいませんでした。佐藤選手もおそらく同じだったのでしょう。鍵山選手に声をかけられて、涙が止まりませんでした。団体戦の直後も同じように涙した佐藤選手。悔し涙のままで終わらず本当に良かったと思います。鍵山&佐藤両選手が表彰台に並び、ともに喜び、讃え合う。そんな場面が見られてこちらもうれしい。
一方、マリニン選手の胸中を思うと複雑です。平昌五輪のネイサン・チェン選手を思い出しました。彼もはじめてのオリンピックで金メダル候補に挙げられながら、らしからぬミスを連発し表彰台すら上れませんでした。金メダル確実と言われる重圧、団体戦からのハードスケジュールは、初出場のマリニン選手にとっては何もかもが未体験の世界。しかしネイサン・チェンは見事次の大会で金メダルに輝きました。もちろん4年は決して短い年月ではありませんが、マリニン選手もきっと次のオリンピックでは輝ける。神様はきっとそんな結末を用意しているはずです。
ところで、佐藤選手の銅メダルが決まった瞬間、誰もが彼の姿を探したに違いない。「コーチ…日下コーチは? どこ!?」
しかしその後、大喜びで場内一周するコーチの姿を捉えた動画がSNSに上がっていました。もはやその人気は国際的。関係者の誰か、裏で決定的瞬間を撮っていなかったのかなあ。
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